中世の拷問
かつてパラフィンは理想的な素材と思われていました。
注入も簡単で面倒な切開手術も必要がなかったためです。
また、少なくとも当初は、体内に入れても悪影響がないとされていました。
ニューヨークの神経科医とウィーンのは19世紀末のほぼ同時期にパラフィンを用いた実験をしました。
理想の素材パラフィンの噂は医療関係者のあいだに広まりました。
しかしのちに日光を浴びるとよくないことが分かってきました。
さらに悪いことに、パラフィン治療を受けた大勢の患者が「パラフィン腫という癌に冒されはじめてしまいました。
パラフィンの除去は注入よりずっと困難な作業だったので、患者は傷だらけにさ、医師たちは動揺しましたが、それでも理想的と思えたパラフィン注入治療を簡単には諦めませんでした。
そのかわり、素材を変えたり、注入方法や温度を変えたりして実験をくりかえしました。
パラフィンとワセリンを混ぜたもの、ワセリンのみ、ワセリンとオリーブ油などが試されました。
パラフィンだけを使用した例は「まるで中世の拷問」だとまで言われることになりました。